「AIスキルがあると年収が高い」とよく言われます。求人を数えると、たしかに差はありました。ただし、その差の意味は少しちがいます。やさしく説明します。
結論:AI活用の仕事を書いた求人は12.0%高い
業務内容の欄に「AIを使う作業」が書かれている求人は、提示年収が12.0%高くなっていました。該当は8,576件中1,804件です。数え方のばらつきを考えると、10.3〜13.7%高いという範囲になります。
この12.0%は、単純な平均の比べ方ではありません。職種・地域・経験年数などの条件をそろえて比べた結果です。
なお、ここでの年収はすべて求人票に書かれた提示年収です。実際に支給される額ではありません。
「スキルを身につければ上がる」ではありません
ここが一番大事な点です。この12.0%は、求人そのものの性質の差です。
AIを使う作業を書く会社は、もともと予算が大きいのかもしれません。募集している役割が重いのかもしれません。そうした差が、この数字には含まれています。
同じ人が同じ会社でAIを覚えたら12.0%上がる、という意味ではありません。
参考になる研究があります。デンマークの行政記録を使った分析(2025年発表・2026年改訂、査読前の論文。労働者約2.5万人と約7,000事業所、実測記録を使った準実験)では、生成AIの登場から2年後の時点で、収入と労働時間への影響はほぼゼロと推定されました。制度がちがうので日本にそのまま当てはめることはできません。ただ「使えばすぐ給料が上がる」わけではない、とは言えます。
AI専門職だけの話ではありません
AI・データ職を外しても、差は残りました。
- AI・データ職を除いた求人:+12.4%(該当1,550件/母集団8,269件)
- 営業・企画・管理部門だけ:+10.4%(該当367件/母集団3,356件)
- 未経験可の求人だけ:+10.5%(該当367件/母集団2,182件)
営業や企画の求人でも、業務欄にAI活用が書かれていれば提示年収は高めでした。ただし該当は367件と少なめです。ばらつきの幅も7.1〜13.8%と広くなります。
スキル別に見ると、求人が少ない技術ほど金額は高めでした
求人票に書かれた技術ごとの提示年収です。求人数が少ない技術ほど、金額が高いという並びになりました。ただし例外もあります。
| スキル | 求人数 | 提示年収の中央値 |
|---|---|---|
| MLOps | 72件 | 950万円 |
| scikit-learn | 31件 | 900万円 |
| PyTorch | 52件 | 833万円 |
| 自然言語処理 | 55件 | 825万円 |
| 機械学習 | 391件 | 720万円 |
| 生成AI/LLM | 1,470件 | 718万円 |
| Python | 1,598件 | 700万円 |
全体の提示年収の中央値は625万円(8,576件)です。
つまり、こういう関係になります。金額が高い技術は、求人がとても少ない。求人が多い技術は、金額が全体の中央値に近づく。MLOpsは72件で、全体のわずか0.8%です。ねらう先が狭いことは知っておいてください。
AI系でなくても同じ水準はあります
提示年収が高いのは、AI関連の技術だけではありません。
- Go:800万円(90件)
- データ基盤:800万円(301件)
- GCP:750万円(1,077件)
- Kubernetes:750万円(273件)
GCPは1,077件(全体の12.6%)あって750万円です。求人の多さと金額の両立という点では、こちらのほうが現実的な選び方かもしれません。
国の統計では確かめられません
日本の国の統計に「AI人材」という職種の区分はありません。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査(実測・国の基幹統計、2025年公表)にも、「データサイエンティスト」「機械学習エンジニア」という区分はないのです。
ですからこの記事の数字は、求人サイト2つを数えた結果にすぎません。日本全体の姿ではありません。
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このデータについて
type.jp・Greenに2026年7月27日時点で載っていた求人8,576件を数えたものです。
東京の求人が70.0%を占め、IT・Web業界にかたよっています。日本全体の平均ではありません。
1つの時点を切り取った数字なので、「増えた」「減った」は分かりません。
求人票に書かれた内容を機械的に分類しており、分類の誤りは全体で34.0%と見積もっています。
数え方と、このデータで言えないことは数え方のページにまとめています。