結論:AIが肩代わりしやすいのは「職業」ではなく「作業」です
先に答えを書きます。AIが肩代わりしやすいのは、職業まるごとではありません。仕事の中にある一つひとつの「作業」です。
私たちはtype.jpとGreenの求人8,576件を読み、仕事の中身を3つに分けました。
- A:生成・定型(AIが手伝いやすい作業) 23.5%
- B:AI活用(AIを使う側の作業) 12.7%
- C:人が担う作業 63.8%
母数は、分類できた業務の記述32,224行です。
同じ職種でも、AとCの混ざり方は求人ごとに違います。ですから「この職業は消える」とは言えません。見るべきは、あなたの1日にAがどれだけあるかです。
AIが手伝いやすい作業の5つの共通点
私たちが求人票を読んで整理すると、Aに入る作業には次の5つが重なっていました。
1. 成果物がパソコンの中で完結する文章、表、スライド、コード。手を動かす場所も、渡す場所も画面の中です。現場に立つ、物に触れる作業は当てはまりません。
2. 正しいかどうかをすぐ確かめられるテストが通るか。数字が合うか。答え合わせが早い作業ほど、AIに任せて直す流れが回ります。
3. お手本がある過去の資料、決まった書式、似た事例。まねる対象がある作業は、AIが形をそろえやすくなります。
4. その場で人に責任を負う場面がないだれかに説明し、納得してもらい、結果を引き受ける。ここは作業として切り出しにくいところです。
5. 必要な情報が文字でそろっている指示や資料が文章になっていれば渡せます。「言わなくても分かるはず」の情報が多い作業は渡せません。
5つ全部にあてはまる作業ほど、AIが手伝いやすいと考えてください。1つか2つなら、まだ人の手が要ります。
求人票に多い「生成・定型」の作業 TOP10
Aに分類した作業のうち、求人8,576件の中で出てきた割合が高い順です。
| 順位 | 作業 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 1 | 開発・実装 | 2,396件 | 27.9% |
| 2 | 一次対応・事務処理 | 948件 | 11.1% |
| 3 | 資料作成 | 637件 | 7.4% |
| 4 | 下流設計 | 617件 | 7.2% |
| 5 | 保守・改修 | 484件 | 5.6% |
| 6 | レポート作成 | 329件 | 3.8% |
| 7 | テスト実施 | 302件 | 3.5% |
| 8 | 文章・コンテンツ生成 | 222件 | 2.6% |
| 9 | データ入力・集計 | 196件 | 2.3% |
| 10 | 一次情報収集 | 143件 | 1.7% |
いずれも母数は8,576件です。上位に並んだ作業を見ると、5つの共通点が重なっていました。
ただし、これは「求人票にそう書いてあった」という話です。実際にその作業が減ったかどうかは、この数字からは分かりません。
実験で分かっているのは「速さ」だけです
ここが大事なところです。AIの効果を測った実験はいくつもありますが、測ったのはほぼ「時間」です。給料や雇用を測った実験ではありません。
- 文章を書く作業:所要時間が40%減り、品質は18%上がった。 米国の大卒専門職453人を、ChatGPTを使う側と使わない側にくじ引きで分けた実験です(Noy & Zhang, Science, 2023年)。ただし課題は30分ほどの短い執筆で、仕事全体ではありません。
- プログラムを書く作業:完了までの時間が55.8%短くなった。 GitHub Copilotを使う側と使わない側に分けた実験で、対象はUpworkで募集したプロ95人(Peng ほか, 2023年。ほかの研究者のチェックを受ける前の論文で、著者に開発元の所属者を含みます)。課題は1本だけで、参加者の国は論文に書かれていません。
- カスタマーサポート:1時間あたりの解決件数が15%増えた。 経験の浅い層では30%増え、ベテランはほぼ変わりませんでした。ある1社のサポート担当5,172人が対象で、89%は米国外(主にフィリピン)にいます(Brynjolfsson ほか, QJE, 2025年)。社内で順番に導入した記録を使った分析で、くじ引き実験ではありません。
これらの論文は「この会社の人が増えたか減ったか」を測っていません。QJEの論文自身が、雇用や賃金の効果を示す設計ではないと書いています。「15%速くなった=15%の人が要らない」は読み違いです。
逆に、成績が下がった実験もあります
AIを使うと必ず良くなる、とも言えません。
BCGの企画・分析などデスクワーク中心の人758人をくじ引きで分けた実験があります(Dell'Acqua ほか, Organization Science, 2026年)。AIが得意な18課題では、こなせた数が12.2%増え、時間は25.1%減りました。一方で、AIの力が及ばない複雑な経営課題では、正しい答えにたどり着く確率が19%下がりました。
同じ実験の中で、速さと正しさが逆を向いたわけです。どこまでがAIの得意範囲かを見分ける力は、まだ人の側に必要だと言えます。
自分の作業を数えてみましょう
紙とペンで10分あればできます。
- 直近1週間にやった作業を、10〜15個書き出します。「会議」ではなく「議事録を書く」くらいの細かさにします。
- 各作業に、5つの共通点のうちいくつ当てはまるかを書きます(0〜5)。
- 4つ以上ついた作業を数えます。それが全体の何割かを見ます。
割合が高いほど、AIに手伝わせる余地が大きいということです。「危ない」ではなく「先に任せられる」と読んでください。
参考までに、求人8,576件を「生成・定型の作業がどれだけ多いか」で4つに分けると、こうなりました。
| 生成・定型の比率 | 件数 | 未経験可 | 提示年収の中央値 |
|---|---|---|---|
| 0% | 3,726件 | 20.5% | 650万円 |
| 0超〜25% | 1,115件 | 16.2% | 695万円 |
| 25〜50% | 1,381件 | 22.2% | 600万円 |
| 50%超 | 1,241件 | 39.1% | 575万円 |
両端(0%と50%超)の未経験可の割合を比べると、偶然では説明しにくい差でした(χ²=169.1、p<0.001)。なお業務内容から1行も分類できなかった1,113件(13.0%)は、この表から除いています。なお、ここでの年収は求人票に書かれた提示額であり、実際にもらえる額ではありません。
この表は1つの時点の求人を切り取ったものです。「生成・定型が多い仕事は年収が下がっていく」という意味ではありません。
このデータについて
type.jp・Greenに2026年7月27日時点で載っていた求人8,576件を数えたものです。
東京の求人が70.0%を占め、IT・Web業界にかたよっています。日本全体の平均ではありません。
1つの時点を切り取った数字なので、「増えた」「減った」は分かりません。
求人票に書かれた内容を機械的に分類しており、分類の誤りは全体で34.0%と見積もっています。
数え方と、このデータで言えないことは数え方のページにまとめています。