「AIエンジニアはやめとけ」とよく言われます。理由を並べた記事もたくさんあります。ただ、そのほとんどは体験談か伝聞です。実際の求人がどうなっているかは、あまり書かれていません。
そこで、掲載中の求人からAIエンジニア(機械学習エンジニア)の募集98件を取り出して、1件ずつ数えました。
結論:「厳しい」のではなく、条件が書かれていない
先に答えを書きます。
1. 求人の44.9%(44件)は、必要な経験年数をそもそも書いていません。「経験3年以上が壁」という話をよく聞きますが、そもそも書いていない求人が半分近くあります。書いてある54件でも、最も多いのは「1年」で26件でした。
2. いま一番求められているスキルは、機械学習ではありません。98件のうち生成AI/LLMに言及があるのは81件(82.7%)、機械学習は61件(62.2%)でした。職種名は「機械学習エンジニア」ですが、中身はすでに生成AIの活用に寄っています。
3. 年収の中央値は775万円でした。掲載中の全求人8,286件の中央値625万円より150万円高い水準です。ただしこれは求人票に書かれた提示額であり、実際に支給される額ではありません。
つまり「AIエンジニアはやめとけ」の実態は、要求水準が高すぎるというより、応募条件が曖昧で判断しづらいということです。
1.「やめとけ」の理由を、求人98件で1つずつ確認した
「やめとけ」と書かれた記事でよく挙がる理由は、だいたい次の5つに整理できます。求人データで確認できたものと、できなかったものを分けました。
| よく挙げられる理由 | 求人98件で確認した結果 |
|---|---|
| 学ぶべきスキルが多すぎる | 確認できた。 出現率30%以上のスキルが11個ある(下の表) |
| 技術の移り変わりが速い | 確認できた。 職種名は機械学習だが、要求1位はすでに生成AI/LLM(82.7%) |
| 求人の競争が激しい | 一部確認できた。 未経験歓迎は12件(12.2%)で、全体の20.5%より狭い |
| 求められる経験年数が高い | 確認できなかった。 44.9%が未記載。記載分の最頻値は「1年」 |
| 地味な作業が多い | 確認できた。 要件定義35.7%、プロジェクトマネジメント30.6%が要件に入る |
5つのうち4つは求人からも裏づけが取れました。ただし「経験年数が高い」だけは、データからは支持できません。
2. 必要な経験年数:44.9%の求人が書いていない
98件のうち、必要な経験年数が読み取れたのは54件だけでした。残りの44件(44.9%)は書いていません。
| 必要な経験年数 | 件数 |
|---|---|
| 1年 | 26件 |
| 2年 | 6件 |
| 3年 | 19件 |
| 5年 | 3件 |
| 記載あり 計 | 54件 |
| 記載なし | 44件 |
記載があった54件の中では「1年」が最も多く、26件です。「5年」は3件しかありません。
「経験3年以上でないと相手にされない」という通説は、少なくとも求人票の記述からは確認できませんでした。
ただし注意が必要です。書いていないことは「条件が緩い」という意味ではありません。 面談で判断している可能性もありますし、書かないだけで実際には高い水準を求めている可能性もあります。求人票から分かるのは「書かれていない」ということだけです。
だからこそ、応募前に経験年数の目安を直接聞くのが有効です。半分近くの求人では、それが公開情報になっていません。
3. 求められるスキル:出現率の上位13個(12位は同率)
98件の要件欄・歓迎条件欄に出てきたスキルを数えました。
| 順位 | スキル | 言及した求人 | 出現率 |
|---|---|---|---|
| 1 | 生成AI/LLM | 81件 | 82.7% |
| 2 | Python | 78件 | 79.6% |
| 3 | AWS | 68件 | 69.4% |
| 4 | 機械学習 | 61件 | 62.2% |
| 5 | GCP | 43件 | 43.9% |
| 6 | Azure | 42件 | 42.9% |
| 7 | Git | 41件 | 41.8% |
| 8 | 要件定義 | 35件 | 35.7% |
| 9 | TypeScript | 35件 | 35.7% |
| 10 | SQL | 33件 | 33.7% |
| 11 | プロジェクトマネジメント | 30件 | 30.6% |
| 12 | JavaScript | 29件 | 29.6% |
| 12 | Docker | 29件 | 29.6% |
クラウド(AWS・GCP・Azure)のどれかに触れている求人が多いこと、要件定義とプロジェクトマネジメントが上位に入ることが特徴です。
「モデルを作るだけの仕事ではない」というのが、この表から読み取れることです。要件を整理し、クラウド上で動かし、他の人と一緒に進める作業が要件に含まれています。
4. いま一番求められているのは機械学習ではありません
上の表で最も重要なのは1位と4位の関係です。
- 生成AI/LLM … 81件(82.7%)
- 機械学習 … 61件(62.2%)
職種名は「機械学習エンジニア/AIエンジニア」ですが、求人が言及する頻度は生成AI/LLMのほうが20ポイント以上多いという結果でした。
データサイエンティストの求人46件と比べると、違いがはっきりします。
| スキル | AIエンジニア 98件 | データサイエンティスト 46件 |
|---|---|---|
| 生成AI/LLM | 82.7% | 58.7% |
| 機械学習 | 62.2% | 84.8% |
| Python | 79.6% | 82.6% |
| SQL | 33.7% | 58.7% |
| 統計解析 | — | 32.6% |
データサイエンティストは機械学習(84.8%)が1位のままです。AIエンジニアだけが、生成AIに入れ替わっています。
同じ「AI・データ職」でも、求められているものが分かれ始めています。
なお、これは1つの時点を数えた結果です。「入れ替わった」という変化そのものを測ったわけではありません。過去と比べたデータは持っていません。
5. 未経験から入れるのか:12件という現実
98件のうち、求人票に未経験歓迎の記載があるのは12件(12.2%)でした。
| 母集団 | 未経験歓迎 | 割合 |
|---|---|---|
| AIエンジニア 98件 | 12件 | 12.2% |
| 掲載中の全求人 8,286件 | 1,697件 | 20.5% |
全体の20.5%と比べると、入口はおよそ6割の狭さです。ただしゼロではありません。
これは求人票の記載を機械的に判定した数です。実際に未経験から採用されるかどうかは、当サイトが応募結果のデータを持っていないため分かりません。
6. 向いている人・向いていない人
ここまでの数字から言えることを整理します。
向いていると考えられる人
- すでに何らかの開発経験があり、クラウド(AWS・GCP・Azureのいずれか)に触れたことがある人。上位スキルの多くを既に満たせます
- 生成AIを使ったものを自分で作った経験がある人。82.7%の求人が言及している領域です
- 要件を整理したり、人と調整したりする作業を苦にしない人。要件定義35.7%・プロジェクトマネジメント30.6%が要件に入ります
- 勤務地が東京、またはリモートで働ける人。98件のうち東京が65件(66.3%)、リモート可が51件(52.0%)です
慎重に考えたほうがよい人
- 完全に未経験から、短期間で移りたい人。未経験歓迎は12件しかありません
- 「モデルを作る仕事」だけを想定している人。実際の要件にはクラウド運用と要件定義が含まれます
- 東京以外で、かつ出社が前提の人。東京以外は埼玉10件・大阪8件・愛知4件・神奈川1件と限られます
リモートについては、AIエンジニアはむしろ恵まれています。リモート可は51件(52.0%)で、全求人の40.3%、データサイエンティストの23.9%より高い水準です。
7. このデータで言えないこと
先に限界を書いておきます。
- 1つの時点を数えただけです。 「増えた」「減った」は言えません
- 求人票に書かれた文章を数えています。 実際の仕事の中身そのものではありません
- 年収は求人票の提示額です。 実際に支給される額ではありません
- 標本が偏っています。 98件のうち東京が65件(66.3%)を占め、IT・Web業界に偏っています。日本全体の平均ではありません
- スキルの判定は辞書による機械処理です。 表記の揺れを取りこぼしている可能性があります
- 「やめたほうがよいか」は分かりません。 分かるのは求人に何が書かれているかだけです
このデータについて
type.jp・green-japan.comに2026年7月28日時点で掲載されていた求人8,286件のうち、
AI・データ職302件、AIエンジニア/機械学習エンジニア98件を数えたものです。
この98件は東京都が66.3%(65件)を占め、IT・Web業界に偏っています。日本全体の平均ではありません。
年収は求人票に書かれた提示額であり、実際に支給される額ではありません。
1つの時点を切り取った数字なので、増えた・減ったは分かりません。
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